The Queue 2017
ウィンブルドン行列体験記&ガイド

英語でThe Championshipsと言えばウィンブルドン選手権、The Queue(ザ・キュー)と言えばウィンブルドンの当日券を買うための行列を意味する。全仏オープンなどが当日券の販売を止めてしまった中で、ウィンブルドンでは行列の伝統を守って期間中毎日1万人近くの人が行列に並んでチケットを買う。

今回は、前回の2016年同様に、行列でチケットを買える一回戦から男子準々決勝までの期間滞在した。前回は中間の土曜日のみホテル泊としたが、今回は期間中すべてテント泊として11連泊し、ロンドン着発日のみホテルに泊まった。この結果、センターコートで4日、No.1で2日の合計6日間観戦できた。今年は例外的に天気が良く快適なテント生活であったが、1日だけ土砂降りでテントに水が浸水して大変だった。



今回のセンターコート座席図

今回も私が以前書いたウィンブルドン行列体験記を参考にしたという方に何人も出会った。私の記録が役に立っているようでうれしい。一方で、初めて来られる方には情報が不十分な点もあったことが分かった。今後の参考のために、特に初めてテント泊で行列される方のために最新の注意事項等を含めて以下にまとめた。

A GUIDE TO QUEUEING WIMBLEDON
これをネットで検索して最新のPDF版を入手し、十分に理解するのが先ずは第一ステップ。2017年版はこちら。様々なルールが書かれているが、すべてが厳格に適用されるかというとそうでもない。行列への割り込みや身代わり行列、テントなどで場所を取っていなくなるなど、公正な行列が成り立たなくなるようなルール違反や人に迷惑になる行為に対しては厳格に対処されるが、一時預け荷物のサイズ制限や夕食時の退出制限(原則30分以内)などは極端でなければ柔軟に対応してくれている。

以下、公式ガイドにない情報及び注意事項(毎年ルールや運営方法が見直されて少しずつ変わってきている点にご注意):

  • センターコート、No.1、No.2の当日券の数は公表されなくなったが、以前と同様に各500枚と思われる。
  • 2017年の行列は前年よりかなり増えた印象。観戦後に並んで2泊しての翌々日のセンターコートは第2週の月曜日(4回戦)以外は確保できた。第2週月曜日は土曜日の午前中から並ぶ必要があったようだ。1週目であれば、前日の早朝に来て1泊でもセンターコートが可能であったようだ。第2週水曜日の準々決勝は月曜日の試合を最後まで見て並んだ人はギリギリだった様子。 第2週火曜日の女子準々決勝は朝早く来ればテント泊なしでセンターコートが取れたとのこと。
     
     Qカード(Queue card= 番号カード)の配布
     
     Qカード、 トップ8シード獲得!
  • 初日のセンターコートを確保するため土曜日の朝から並んだ。正式行列前なので公園前の歩道にキャンプしていたが、特別に公園内に移動させてくれた。今年だけの特例の可能性もある。また、この日の夜のトイレは仮設トイレが使えないので歩いて7分のスタバまで行く必要があったが、携帯トイレで済ませた。 翌日曜日からは公園内の芝の上で快適なキャンプ。蚊などの虫がいないのが助かる。臨時トイレ、ファストフードなどもある。
  • 行列に並ぶ手順は次の通り:  
    1. ウィンブルドンパークに行くとテントが並んでいるのでその最後尾に付く。大きくQと書いた旗が目印。
    2. Qカード(Queue Card=行列番号カード)を配布中であれば受け取る。 (配布中か未配布か必ず確認すること!)
    3. スタッフの指示に従ってテントを設営、固定。
    4. Qカード配布は30分前に予告される。30分以上の外出をしないようにしてひたすら待つ。配布時間は午前中の場合もあれば午後遅くの場合もあって、不正防止のため意図的に変えている様子。翌々日の観戦予定者も翌日用のQカードをもらう。
    5. Qカードをもらっても安心はできない。Qカードチェックが行われる場合が多い。チェックも30分前に予告される。長めの外出の場合は、お隣さんと電話、SMS、Messengerなどで連絡を頼んでからとすること。
    6. 夜8-10時はレストランに食事に出ている人が多い。(チェックはないと希望的観測)
    7. 10時就寝。 うるさい人がいればスタッフに頼めば注意してくれる。
    8. 4:30-5:30 起床、シャワー。 
    9. 5:30 テントを畳み、一時預けに預ける(6時前が混まないのでお勧め)。預け料はキャンプ用品5ポンド、その他1ポンド。翌日の観戦の場合は、テントをたたまずに行列の外にでて、7時ごろからスタッフの指示でQカード順に並び直す→4以降の手順。
    10. 6:30頃 テントなしで並び直す。 荷物預けが遅れた場合はQカードの番号で自分の位置を探して入る
    11. 7:00頃 移動開始。セキュリティの前まで進む。 
    12. 7:30頃 センター、No.1、No.2のリストバンド配布開始。センターのリストバンドをもらって初めてセンターコートの席が保証される。 
    13. 8:45 空港式セキュリティ通過開始。セキュリティは厳格なので持ち込み禁止品は事前にQ ガイドを見て持ち込まないこと。
    14. 9:45 チケット販売開始。現金のみ。売り場の上に座席のセクションが電光表示(右側の売り場が東側席、左側が西側席)。座席は座席図を見て事前に決めておいて売り子に希望を伝える。 
    15. 10:00 トイレ、ショップのみオープン 
    16. 10:30 ガードマンの歩調に合わせて進み、会場全体がオープンになる。11時半開始の試合会場に行く。
  • 座席はすべてコートサイド。席はセクションによって異なるが、通常3〜10列目の席が行列用に確保されている。東側は主審の反対側で見やすいが、西日がかなりきつい。2017年は晴天続きだったので辛かった。西側席の選手出入り口(101)はサインをもらいやすいので人気がある。2016年は係員が試合終了時の移動をブロックしてサインはもらえなかったが、2017年はブロックされずサインがもらえたようだ。
  • 行列でセンター、No.1コートのチケットが買えるのは準々決勝までだが、準決勝、決勝のリセールチケットを入手できる可能性もある。リセールチケットは途中で退出した人のチケットがチャリティ目的で再販されるものだが、来られなかった人や早々に退出する人もいるようで早い段階でリセールチケットを入手できる可能性がある。但し、テント行列で先頭近くを確保することと、開場後リセールチケット売り場(18番コートの上方)までダッシュして良い順番を取ることが不可欠。今年の男子準決勝のリセールでは激しいもみ合いで大混乱したとのこと。 2018年以降は運用方法が変わるかもしれない。
  • テント・マット・寝袋は不可欠。夜10℃以下まで下がることがあった。全部で1万円以下の安価なもので十分。古いテントを持参する場合は防水加工が必要。他に必需品は、雑巾、トイレットペーパー(時々紙切れ)、ウェットティッシュ、LEDライド、雨具、スマホ用モバイルバッテリー(飛行機に持ち込める160mW未満)。あると便利なのはコンパクトな折りたたみ椅子。バッグはスーツケースではなく、キャスター付きのスポーツバッグで制限サイズの60cm x 45cm x 25cmに近いものが良い(多少オーバーしても受け入れられる)。レジャーシートは新聞のおまけで買える(5ポンド)。
  • 雨の多い、少ないは年によって異なるが、雨対策は必要。地面が泥でぬかるむので、靴は汚れてもよいもの、できれば防水処理したものが望ましい。ジーンズより乾きやすいトレッキングパンツの方がよかった。
  • シャワー、コンビニ、充電、洗濯、食事、携帯電話、タクシー、B&B、ホテルについては、ウィンブルドン行列便利メモウィンブルドン便利地図を参照。


ウィンブルドンでの行列に並ぶと、イギリスの文化やイギリス人の価値観に触れる思いがする。他の大会がチケットをネット販売に切り替え、下段席を高額化する中で、ウィンブルドンだけが手間のかかる郵送による抽選や行列による販売、全席統一価格の伝統を守っている。商業的に考えればネット販売で費用を大幅に下げ、座席価格に差をつけることで収入増もできる。にもかかわらず伝統的な販売方法を守っているのはなぜだろうか。

イギリスも格差社会ではあるが、その中で誰もが楽しめる公平さの追求ではないかと感じる。お金持ちは高額のディベンチャーチケット(転売可能な株主用チケットで一般価格の20〜50倍程度)で、庶民は抽選と行列によるチケットで観戦を楽しむ。また、主催者側と観客双方が手間をかけることにも大きな価値が置かれている。行列では大掛かりな準備と数多くのスタッフ(スチュワード)やボランティア(名誉スチュワード)が投入されている。行列する側もテント泊でなくても5時間程度の行列は当たり前となっている。長い行列の時間は、お隣さんやスチュワードとのお喋りを楽しみながら待つ。手間をかけるほど喜びは大きい。テント泊の人には、センターコートやNo.1コートのコートサイド特等席が用意されている。

われわれ外国人も等しく恩恵を受けられるのであるが、ウィンブルドンが守る伝統の意味を考えて行列に加わることが大切だ。過去に日本人が重大なルール違反をしていたのを見たことがあるが、これだけの恩恵を受ける者としては襟を正して行列に並びたい。さすれば行列もまた楽し!

今年の行列では、重大なルール違反の摘発と対処が過去にない厳しさで行われた。重大なルール違反とは、割り込み(テント設営時には一人だったが、その後Qカード配布前に友人を引き入れるなど)、身代わり(観戦当日の朝方に入れ替わるなど)、中抜け(長時間テントに戻らない、テントで眠らず近くのB&Bで泊まった後テントに戻るなど)やひどい迷惑行為(飲酒で騒ぐなど)。今年は深夜に中抜けチェックが行われていた。懐中電灯でテントを照らし、人の気配がない場合はテントを揺すり、さらに入り口を開けて確認していた。問題のあったテントは時間を置いて再チェックし、テントを移動した模様(実際には目撃していないが、朝起きるとテントが間引きされた状態を見た)。こうした重大なルール違反は即刻退場となる。もちろん合理的な説明の付く違反は認めてもらえる。私もQカード配布時に20分ほど遅れたが、行列の隣人が私の名前を伝えてくれていたことで事なきを得た。また、ある日本人3人は行列最後尾に付いた時点でQカードが配布中であったことを見逃し、翌朝になって次の日の行列に並びなおす時点で彼らだけがQカードを持っていないことが発覚した。この時も隣の人が「ずっと並んでいた」と証言してくれて事なきを得たとのこと。行列のお隣さんとのコミュニケーションはとても大切だ。

英語の不得意な人もそれほど心配することはない。行列では同じ趣味と目的をもった人たちばかりなので、片言の英語でも十分コミュニケーションが取れ、簡単に仲良くなれる。英語が不得意でも臆することなく会話を試みることが重要だ。また、困った時は行列の中で日本人を見つけることもできる。行列では時間はたっぷりあり、いろいろな国の人たちと語り合えるまたとない機会だ。私はテニス観戦と同じくらい行列を楽しんでいる。「行列でお喋りを楽しみ、その上最高のチケットが手に入るなんて、とても幸せな人たちね!」とは、ある名誉スチュワードの言葉。まさに至言。

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