The Queue 2016
ウィンブルドン行列体験記

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英語でThe Queueと言えばウィンブルドンの当日券を買うための行列を意味するが、全仏オープンなどが当日券の販売を止めてしまった中で、ウィンブルドンでは行列の伝統を守って期間中毎日1万人以上の人が並んでチケットを買う。

今回は、前回の2013年同様に、行列でチケットを買える一回戦から男子準々決勝までの期間滞在した。前回まではホテルかB&Bを確保したうえで、テント泊とホテル泊を交互に入れたが、今回は中間の土曜日を除いてすべてテントで連泊した。テント10泊、ホテル2泊。この結果、センターコートで4日、No.1とNo.2各1日の合計6日間観戦できた。



今回のセンターコート座席図

私が以前書いたウィンブルドン行列体験記を参考にしたという方に今回も出会った。私の記録が役に立っているようでうれしい。今後の参考のために、テント泊で行列される方のために最新の注意事項等を以下にまとめた。

A GUIDE TO QUEUEING WIMBLEDON
これをネットで検索して最新版を入手し、十分に理解するのが先ずは第一ステップ。様々なルールが書かれているが、すべてが厳格に適用されるかというとそうでもない。行列への割り込みや代理行列、テントなどで場所を取っていなくなるなど、行列自体が成り立たなくなるようなルール違反や人に迷惑になる行為に対しては厳格に対処されるが、一時預け荷物のサイズ制限や夕食時の退出制限(原則30分以内)などは極端でなければ柔軟に対応してくれている。

以下、公式ガイドにない情報及び注意事項(毎年ルールや運営方法が見直されて少しずつ変わってきている点にご注意ください):

  • センターコート、No.1、No.2の当日券の数は公表されなくなったが、以前と同様に各500枚と思われる。
  • 2016年の実績では、第一週は1泊でセンターコートが可能だったが前日の早朝に並ぶ必要があった。前々日の夜から2泊すればセンターコートでも好きな席が選べた。第二週月曜日の4回戦のセンターコートは、土曜日の午後早々から2泊する必要があった。同水曜日の準々決勝は、火曜日の早朝からの行列で可能だった。年によって変化するので保証の限りではない。
     
     Queue card 番号カードの配布
  • 初日のセンターコートを確保するため土曜日の夜から並んだが、正式行列前なので公園前の歩道にキャンプした。深夜でも車が通って度々起こされた(耳栓必要)。また、トイレは5分歩いてスタバまで行く必要があった。翌日曜日からは公園内の芝の上で快適なキャンプ。虫がいないのが助かる。臨時トイレ、ファストフードなどもある。
  • 行列最後尾に並んで番号カードを受け取るが、通常午後2時ごろから配布された。午前11時に配布された場合も一度だけあったが、その日の午後に番号カードのチェック(不在チェック)が行われた。配布時やチェック時の30分程度前には必ず予告される。夕方以降に並ぶ場合はその場で番号カードが配布される。
  • 当日は、5時半起床後テント撤収、荷物の一時預け。行列は7時ごろより進みだしてセキュリティの前で止まる。コートの希望が確認されてリストバンドが配布される。8:45より空港式のセキュリティを通る。売り場は9:15ごろオープンするが、売り場の上に電光表示された座席ブロックを見て、売り場を選んで希望のブロックを伝える。事前に座席図で希望席を確認しておくことが必要。
  • センターコートのブロック101は出口付近でサイン取得のため人気があったが、試合終了後の移動が子供以外認められなくなったのでサイン取得は難しくなった。審判席の反対側は見やすいが、晴れた日は西日が強いのでご注意。
  • 今回初めてテントでの連泊(観戦後にそのままテント泊)を試したが、移動時間が少なく、翌朝も早朝に来る必要がないので身体的には楽に感じられた。
  • テント・マット・寝袋は不可欠。夜10℃以下まで下がることがあった。全部で1万円以下の安価なもので十分。古いテントを持参する場合は防水加工が必要(今回の反省点=テントの底から水が浸みてきた)。他に必需品は、雑巾、トイレットペーパー(時々紙切れ)、LEDライド、雨具、大容量のスマホ充電用バッテリー(飛行機に持ち込める160mW未満)。あると便利なのはコンパクトな折りたたみ椅子。バッグはスーツケースではなく、キャスター付きのスポーツバッグで制限サイズの60cm x 45cm x 25cmに近いものが良い(多少オーバーしても受け入れられる)。
     
     ケイ君も行列愛好者
  • 雨の多い、少ないは年によって異なるが、雨対策は必要。地面が泥でぬかるむので、靴は汚れてもよいもの、できれば防水処理したものが望ましい。ジーンズより乾きやすいトレッキングパンツの方がよかった。
  • シャワーは公園内の池のほとりにあるWater Sports Outdoor Centreの2階で5ポンド。時間は朝6時―8時だったが、最終日は朝4−6時に変更された。開業時間は現地で要確認。
  • 充電はSouthfield駅近くのスタバ。イギリス用電源プラグ変換アダプター(BFタイプ)が必要。認められた退出時間30分では充電は難しいので、番号カード配布直後か夕食時間帯が望ましい。できればお隣さんに何かあった場合の電話連絡を頼んでおいた方が良い。
  • 携帯はSIMフリースマホが便利。SIMLocalでSIMを事前発注してヒースロー店で受け取るか、その場で買う。1か月有効のSIMカードで10GB+日本通話30分付きで40ポンドと安い。自動販売機もあるが、iPhoneではプロファイルをWifiでダウンロードする必要があるので、人のいるSIMLocalが良い。
  • 空港往復の車は、ブラックキャブで80ポンド、ミニキャブで40ポンド、Uberで30ポンド程度。個人的には馴染みのミニキャブを頼んでいる:wimbledon-minicab.co.uk
    ホテル泊を入れる人はUberが安くて便利なようで、深夜でも問題なく使えたとのこと。


ウィンブルドンでの行列に並ぶと、イギリスの文化やイギリス人の価値観に触れる思いがする。他の大会がチケットをネット販売に切り替え、下段席を高額化する中で、ウィンブルドンだけが手間のかかる郵送による抽選や行列による販売、全席統一価格の伝統を守っている。商業的に考えればネット販売で費用を大幅に下げ、座席価格に差をつけることで収入増もできる。にもかかわらず伝統的な販売方法を守っているのはなぜだろうか。

イギリスも格差社会ではあるが、その中で誰もが楽しめる公平さの追求ではないかと感じる。お金持ちは高額のディベンチャーチケット(通常価格の20〜50倍程度)で、庶民は抽選と行列によるチケットで観戦を楽しむ。また、組織側と観客双方が手間をかけることにも大きな価値が置かれている。行列では大掛かりな準備と数多くのスタッフやボランティアが投入されている。行列する側もテント泊でなくても5時間程度の行列は当たり前となっている。長い行列の時間は、お隣さんやスチュワードとのお喋りを楽しみながら待つ。手間をかけるほど喜びは大きい。テント泊の人には、センターコート最前列のコートサイド席が用意されている。

われわれ外国人も等しく恩恵を受けられるのであるが、ウィンブルドンが守る伝統の意味を考えて行列に加わることが大切だ。過去に日本人が重大なルール違反をしていたのを見たことがあるが、これだけの恩恵を受ける者としては襟を正して行列に並びたい。さすれば行列もまた楽し!

 
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