2001年4月19日(木)第4日
青く澄み渡った四月の空と、透き通った紺碧の海の間に、レッドクレイのコートが目に沁みる。ドイツでは雪が降っているというのに、この地中海沿いでは、短パン、半袖でテニス観戦を楽しめる。
1928年設立のモンテ・カルロ・カントリー・クラブ(MCCC)で、テニス・マスターズ・シリーズ・モンテ・カルロが開かれている。このトーナメントは、1897年に発祥する大会でウィンブルドンに並ぶ歴史がある。優勝者にはドファティー兄弟、ティルデン、コシェなど歴史上のプレーヤーの名前が並ぶ。近年では、ナスターゼ、ボルグ、レンドルからリオス、モヤ、クエルテン、ピオリンまで。クレイでは、全仏ローラン・ギャロスに次ぐ格式ある大会。
今年は、アメリカ勢が殆どおらずチャンのみで(1回戦敗退)、アガシなどが欠場しているのが残念。デビスカップとのスケジュールのせいだろうか。プレーヤーの多くは、クレイの得意な欧州・南アメリカのラテン系と、モロッコ、ドイツ、スエーデンなど。異色なところでは、唯一T.Henmanが準決勝に進んでいる。
今日は、3回戦=1/8戦です。ハイライトは、G. Kuerten vs. T. Haas (6-7/6-3/6-3)。クエルテンはこの大会では1回戦から体調不良に苦しんでおり、今日も苦しい戦いであった。第1セット中盤までは1アップで順調に進んでいたが、トイレタイムを10分近く取り(審判が放置したのも不思議だが)、そのあと突然動きが鈍くなった。ファーストサービスも殆ど決まらなくなり、5-3のサービスゲームでハースの反撃を許して、逆転されてしまった。第2セットに入って少しずつリズムを取り戻すが、まだ本調子ではない。ハースもいいショットが多いが、ここ一番で力が入りすぎてミスが出てクエルテンは救われる。第3セットは、完全にクエルテンのペースで、別人のようなスーパーショットが決まり続けて安心して観られる一方的な勝利。のらりくらりとして観客からブーイングも受けたが、試合の中でペースを変えながら体調を取り戻すのは流石。既に老練の域に達したようだ。
クエルテンが老練の域なら、ヌーベル・バーグ(新しい波)の台頭もある。ともに19歳のG.Coria(アルゼンチン)とR. Federer (スイス)の1/8勝ち上がりが光った。フェデレは、サフィンを破ったディ・パスカーレ(フランス)を圧倒。フェデレはまだまだ強くなりそうだ。
昨年の覇者C.Pioline(フランス)を破ったH.Arazi(モロッコ)のプレーも光る。今大会でS.Grosjean(フランス)と並ぶ軽量級(173cm、65Kg)で、強い風の中で軽いボールに苦しんだが、足と抜群の運動神経の切れでしのいだ。ピオリンの精神的な弱さに助けられたのかも知れない。ピオリンは第1セットで押しながらもタイブレークで敗れ、その直後にブレークされるとプツンと切れてしまった。明らかに分かる形で雑なプレーとなり、味方である筈のフランス人からもブーイングをされてしまう。
テニスの後は、ホテルで知り合った3人の女性と夕食を楽しむ!!
と言っても、70才くらいのおばあさん3人組で、きっと旦那が死んでテニス観戦旅行を楽しんでいるのであろうか。ピオリンの不甲斐なさと、審判のだらしなさを嘆く気の強いおばあさん達。ひょっとしたら、昔は名のあるプレーヤーだったのかも知れない。
さて、明日の試合は、
G. Goria vs. A. Martin
H. Arazi vs. T. Henman
R. Federer vs. S.Grosjean
G. Kuerten vs. S. Schalken
2001年4月20日(金)第5日
今日も快晴。さわやかな初夏の日和。
全仏オープンはフランス中の美人が集められることで有名だが、このマスターズ・モンテ・カルロも引けは取らない。全仏では主催するFFT(フランス・テニス協会)が美人狩りをして配置しているのですが、モンテ・カルロでは観客にとびきりの美人が多いのが特徴。得意の美人観察をした結果、美人の分布に法則があることを発見した:
1) コートに近い席ほど美人度が高い
2) 桝席(Loge)では、質・量ともに一気に高まる
3) クラブハウスのバルコニー席にはスーパーモデルのような美人
4) バルコニー中央のロイヤルボックスには気品ある美しさの高貴な女性
さすがグレース・ケリーの伝統のあるところだ。
ロイヤルボックス テニスより美人に見とれているの はビーム仏テニス協会長。全仏のための美人狩? |
バルコニー席の麗人 | いつかロイヤルボックスに |
テニスプレーヤーにもモナコに住んでいる選手が多いのは税金の関係だろうか、それとも美人の関係だろうか。今大会参加64選手中12名がモナコ在住となっている。有名選手では、M.Safin、H.Arazi、D.Hrbaty、S.Schalken、スエーデン選手は殆ど全員でM.Norman、J.Bojrkman、T.Enqvist、T.Johanssonなど集団移住とも思える。あまり有名でない選手も多く、フロリダに匹敵する気候とコーチ層の厚さがこれだけの選手を集めているのだろう。確か鈴木貴男選手も一時モナコをベースにしていたような記憶がある。
さて、今日の準決勝4試合は、準決勝に相応しい見所のある試合ばかりであった。
G. Goria vs. A. Martin 6-3/4-6/6-3
H. Arazi vs. T. Henman 7-6/2-6/7-6
S.Grosjean vs.R. Federer. 6-4/6-3
G. Kuerten vs. S. Schalken 6-7/6-2/6-4
3試合もフルセットにもつれる激しい試合で見るほうもぐったりと疲れてしまった。最後のクエルテンの試合は日没後の急激な冷え込みに耐えられず最終セット4−0となったところで退散。
今日のハイライトは、アラジ−ヘンマン戦。双方にブレークが続いての白熱したシーソーゲーム。ヘンマンのクレイでのプレイも見ごたえあった。ネットプレイにこだわり、美しいボレーを決める。一方のアラジはサーブが弱く(ファーストで150−160km、セカンドは80−100km程度)サービスゲームのキープに苦しむが、テクニックは見事。短いボールでヘンマンをネットに誘い、切れ味のいいバックでパッシングを決める。思わぬところで緩い浮き球を返してアウトを誘う。80kmのセカンドサーブも、私にはちょうど良いようなスピードだが、ヘンマンは強打してアウトが続き、その後は慎重に返していた。最後は、技が力を制して二つのタイブレークをものにする結果となった。
全豪ベスト4で2001年ATPチャンピオンレース現在7位のグロージャンも絶好調。クレイではあまりないフラットなボールでウィナーが次々と決まる。足と正確なショットが見事。175cm、66kgと小柄だが、ハンサムなマスクでモテモテ。昨日のピオリンに対するブーイングとは対照的な応援で、「セバスチャン、チャチャチャ」とウェーブの連続で盛り上がる。フランスでは観客を味方にするのも重要だ。
クエルテンはファーストセットのタイブレークを落としたが、今日は安心して見られる展開であった。19歳のコリア(韓国人ではなくアルゼンチン人)は、フルセットを全力で走りきり、疲れを知らないのは若さならでは。息を抜くところがなく、見ている方が疲れてしまった。
明日の準決勝は、南米対決と地中海対決。
G. Kuerten vs. G. Coria
S.Grosjean vs. H. Arazi
私の予想は、クエルテンとグロージャンが決勝に勝ちあがり、優勝はクエルテンです。クエルテンは必ずしも体調は良くないようだが、我慢しながら勝機を見つけるところが素晴らしく準決勝・決勝も凌ぐのではないだろうか。(決勝は、クエルテン対アラジとなり、3-0のストレートでクエルテンの二度目の優勝となった。)
私は今日でコートダジュールでの調整を終えて寒い北国に向かい、22日のロッテルダムマラソンを走る予定。現地は気温2度、寒そうなだなぁ....
G. Kuerten | Brasil |
T.Haas / Germany | G. Coria / Argentin | G. Blanco / Spain | R. Federer / Swiss | A. Di Pasquale / France |
H. Arazi / Morocco | C. Pioline / France | T. Henman GB |
S. Grosjean / France |