96年9月30日
今日はフランスのテニスについて紹介します。
フランスのプロ選手では現在は男女ともにトップ10の選手はいませんが、平均的には非常に高い水準を保っています。今年のDavis Cupではドイツ、イタリアを破って決勝に駒を進めており、91年に優勝した時の盛り上がりを見せています。また、Fed Cupではスペインに敗れましたが日本と同じく準決勝まで来ています。
フランステニス協会(FFT)の組織力と美人審判、美人選手養成などの戦略については、以前レポートしましたが、今日は選手層が厚い背景などをレポートします。(今日はまじめな話です!)
FFTには10,000の加盟テニスクラブと110万人の加入者がいます。これはフランスの総人口の1.9%です。Yanick Noahなどが活躍した10年程前は150万人程度の加入者がいたとの事です。勿論FFT非加入者でテニスをしている人も沢山います。
名張市の山田さんによれば、テニスの盛んな同市で、人口8万人に対して千人程度のテニス人口=1.25%との事ですので、FFTへの加入率が如何に高いか理解して戴けるでしょう。
フランスには日本の学校の部活のようなシステムはありません。テニスを始めるのは、市などの自治体のスポーツ教室か民間のテニスクラブです。ある程度のレベルになるとトーナメントへの参加が奨励されます。そして、素質のある子供はテニスクラブがサポートしていきます。
殆どのクラブがFFT加盟クラブですので、これらのクラブが行うトーナメントはFFT認定トーナメントとなります。年齢別などのトーナメントもありますが、通常はあらゆる年齢層、技術レベルのプレーヤーを対象としたトーナメントです。ここでポイントとなるのは、試合の組み合わせを決め、また、試合結果を反映させるランキングのシステムです。
フランスにはClassement(クラスマン=クラス分け)と呼ばれるFFTによる全国統一のランキングシステムがあります。ランク(クラス)は次のように分かれます。
1st series (トッププロ、男子上位30、女子上位20)
2nd series -30, -15, -4/6, -2/6, 0 1/6, 2/6, 3/6, 4/6, 5/6, 15(プロ、プロ予備軍)
3rd series 15/1, 15/2, 15/3, 15/4, 15/5, 30(上級者)
4th series 30/1, 30/2, 30/3, 30/4, 30/5
このランキングシステムは一部で行われているハンデ戦と同じ考え方です。
現在ではハンデ戦は公式戦では行われていませんが、フランスでの初期のテニスではゴルフのようにハンデを持って戦われていたようです。そのハンデがランキングシステムとして確立されました。
ランキング15の選手と30の選手のハンデは毎ゲーム1ポイントで15-0から始めます。-30と15では、毎ゲーム15 - (-30) の3ポイントのハンデとなります。 -30, -15, 0, 15, 30の間にあるランクのハンデは、1セット内でのハンデポイントを示します。15/1と15/2では1セットで1ポイントのハンデで、ファーストゲームのみ15-0で始めます。
公式戦では使われていないものの、実際の実力差をかなり正確に反映しているようです。
-30を超えるのは全仏ランキングで男子が上位30名、女子が上位20名です。また、マイナスのランクを持つ選手は男女各50名程度のようです。
ランキングは実力を表すとともに、選手層のピラミッドのバランスが整えられています。
身近な人のランキングを聞いてみると、
各トーナメントでは、初日がランク無しで始まり、2日目以降順次、第4、第3、第2シリーズがトーナメントに加わります。このシステムにより、試合の組み合わせは同じランクグループ内か下位グループの勝ち上がりとの組み合わせとなるようになっています。
このランキングは1年に1回改定されます。ランク差による勝敗ポイントが決められており、年間最低16試合以上の勝敗ポイントで、次年度のランクが決められます。
フランスは日本の平均社会とは全く異質な階級社会です。ランク15/1と15/2では大した違いはないように思うのですが、この国では15/1は15/2に対して威張りまくり、15/2はひれ伏さなければなりません。この張り合いが技術を磨き、上に行こうとする原動力なのです。(サラリーマンにも国家による等級が決められており、賃上げ交渉に加えて等級up交渉で泣かされます。(^_^;) )
統一ランキングシステムによるトーナメントで重要な事はポカ負けをしない事です。上位者に勝っても下位にポカ負けをするとランクアップしません。先ず安定したプレイが要求されます。
こうして統一ランキングシステムのトーナメントによって、フランスの選手層が厚くなっているのです。しかし一方では、安定性を重視する弊害として、フィリポーシスのような規格外の選手がでて来ない原因となっているのかも知れません。
さて、フランスのテニスはこうした上位の選手層だけではありません。
すそ野にはわれわれのように楽しむテニスをする人が大部分です。60歳を過ぎた年代の夫婦、友人同志がテニスを楽しんでいるのをよく見かけます。むしろ若い人達よりも多いくらいではないかと思う事もあります。生涯スポーツとして定着しているのです。中には、私と同じコーチから指導を受けている人で71歳で第4シリーズのランキングを持って公式試合に出ているようなつわものもいます。
日本でもゲートボールばかりでなく、高齢者のテニスが増えるといいですね。私もフランスに来てみて、あと20年位はテニスを楽しめるのではないかと思えるようになって安心しました。