テニスコート造成日記 アルジェリア高速道路工事、現場宿舎でのテニスコート造りの顛末 |
|||||||||||||||||||||
一時帰国から戻るとテニスコート造成の決定がされていた。過去2回テニスコートの計画が一旦承認されたものの諸般の事情でストップした経緯がある。3回目の今回こそは実現しなければならない。雨季も近づいているのでそれまでに完成させなければならない。 3年前からこのプロジェクトで涙を飲み続けてきたYさんが一時帰国に入るため、代わりに私が担当エンジニアの任にあたることとなった。早速用地調査と設計を開始した。前回の計画時に知り合いから入手した「屋外スポーツ施設要覧―テニスコート編」がバイブルだ。 コートはテニスだけでなく、フットサルとストリートバスケのコートを兼用する。規格ではテニスコート1面を取るには規格では38mx20mの土地が必要だ。宿舎内では十分な土地がないが、何とか36mx18mの用地を確保できた。フットサルも最小ではあるが規格内に収まる。 明日にも施工を担当する舗装班と協議を進めて、すぐに工事に入る。忙しくなりそうだ。 2011年9月15日(木) 13日より整地作業が始まった。緩やかな勾配があるので、上側を削って下側に土を盛って均す。 基本レイアウトも概ね完成した。普段は夕方5時に定時退社の私であるが、今週は7時まで残って図面を引いた。あとは、金網・扉施工図、テニスネット支柱とセンター固定金具施工図、フットサルゴールなどの詳細図を作る必要がある。
フットサルのゴールは50φ程度のパイプで抜き差しできるものを想定していたが、シュートで簡単に折れてしまうことに気付いた。80□の角材のフレームを後ろからステイで支える構造が不可欠だ。しかし、重くなってゴールの移動が難しくなる。テニスの邪魔にならないよう、長手方向の長さに少し余裕があるので36mから38mに設計変更した。これならテニスのエンドラインからゴールまで5mあるのでテニスには問題はないだろう。横方向も通路を削って19mまで広げることにした。地均し中であったため変更は受け入れてもらえた。 そんなこんなで走り回って1日が終わる。疲れた体を風呂で癒して、ビールを飲む。うまい!自分の設計したものが、少しずつ形になる喜びは格別だ。工事現場は3K職場だが、土木エンジニアの仕事の喜びが少し実感できた。 このところ本線工事優先でなかなかコート工事が進まなかったが、今日は工事を進めてもらえた。0〜31.5mmの砕石を敷いて均す作業が行われた。 テニスコート工事と高速道路工事の仕様を比較すると
高速道路とは比べものにならないが、テニスコートとしては立派なものである。特にアスファルト2層は贅沢なものだ。これで後々波打ったりすることが避けられる。 今後の予定は、路盤工事があと1日、アスファルト舗装が1日、測量が数時間。これを今週中に終わらせることができれば、今週末(金)にテニス・フットサル仲間とライン引きができる。そして来週にはフェンスを張って来週末にお披露目が目標だ。しかし、本線工事から人と機材をいつ回せるかが不透明だ。 2011年10月7日(金)
2011年10月9日(土) 今日からはフェンス工事で金網と照明用のポールの埋め込み作業が始まった。作業を見に行くと、テニスのネット支柱を抜き差しするためのスリーブに6メートルの照明用ポールを埋めてコンクリートで固めようとしているではないか!あぶないところだった。危うく、ネットが6メール高さになるところだった。 フェンス工事に思いのほか時間がかかっている。本線工事でワーカーの数が確保できないのと、金網下のコンクリート用の型枠用足場材が不足しているため、コンクリート打設に4日もかかってしまった。そのため週末の完成目標が週明けに持ち越されてしまった。
ライン引きは雨の上がった昨日の午後から始め、今日は一日つきっきりでワーカー4人と一緒に行った。テニスとフットサルの四隅は測量されているが、念のため直角が出ているか確認する。すっかり忘れていたピタゴラスの定理だ。a2 + b2 = c2 で斜めの距離16.174mを計算して、その通りの長さが出ていることを確認。 先ずは各コーナーを結ぶ糸を張り、その内側5cmにもう1本糸を張る。その糸に沿ってマスキングテープを貼る。マスキングテープの内側を水性ペンキで塗る。油性ではアスファルトのせいで滲むので水性しか使えない。塗った後半日以上おいて二度目を塗る。 ライン引きは結構時間がかかり、結局二日がかりとなった。でもその努力が報われた。マスキングテープを剥がすと美しい線が浮かび上がる。感動の一瞬だ。
2011年10月18日(火) ランプは1KWのハロゲンランプだが、フィリップスを希望しても決済が得られなかった。1本\3,500のフィリップスと\400の中国製では値段で勝ち目はない。この中国製は現場で使っているが、2週間程度しか持たない。これに対してフィリップスは何か月も持つ。1日数時間程度の使用なので中国製でも数か月程度は持ってくれるものと期待することにする。 夜になってライティングを確認すると、光は均等に配分されて美しい。光量も十分だ。これでグランドは完成した。 完成が近づいてくると野次馬が増えてくる。野次馬ならまだいいが、突然中に入って使いだすのがいる。揃いのユニフォームを着た発注者のサッカーチームだ。ゴールのペンキが塗ったばかりで乾いていないのに、OK、OKと言いながら勝手に使う。何とか追い出したが、ルール作りが必要だ。 キャンプ住人向けの設備として企画されたが、結局アルジェリア人枠を作って週日の夕方5時からの1時間を認めることとした。住人の方は、テニス、フットサル、バスケットボールの三者で分け合う時間割を作った。 今日はトップによる始球式でオープニングを行う予定であったが、夕方から激しい雷雨となって中止となった。40km先では殆ど雨はなく、当地だけの激しいゲリラ豪雨だった。とんだオープニングの代わりに部門長が慰労会を開いてくれたのには感激した。アドバイスを受けながら、担当エンジニアとして何とか雨季直前の完成にこぎつけることができた。道路工事専門集団だけに出来栄えも最高だ。 2011年10月21日(金) |