PARIS MASTERS 2012
Paris, November 2012



今回のパリ・マスターズには失望を隠せない。ナダルの怪我での欠場は止むを得ないとしても、大会直前にフェデラーがスイスの大会での疲労を理由に欠場し、ジョコビッチは緒戦の2回戦で敗れ、残ったマリーも3回戦で予選上がりのヤノウィッツに敗れて、準々決勝にはトップ4がいないという事態。それどころか、続くトップ10のベルディッヒ、ツォンガ、デル・ポトロ、ティプサレビッチまでもが準々決勝で消えて、準決勝に残ったのはフェレールとランキング20位以下の選手ばかり。

これではとてもマスターズ1000の大会とは言えない。年初からのマスターズ1000では常にトップ4の誰かが優勝している。それがマスターズ最終戦でこのような事態になったのは、翌週にロンドンでATPファイナルズがあるというカレンダーが理由だ。ATPファイナルズはトップ8だけが出場できる今季最終大会で、ポイント、賞金ともにグランドスラムに続くレベルだ。当然トップ選手は、パリで日曜日の決勝後にロンドンに移動して、月曜日から戦うなどとは考えない。理由があればパリを欠場し、なければ早々に負けてロンドンに備える。

寂しい大会となったが、見どころもあった。予選勝ち上がりで決勝まで進出したヤノウィッツ(J. Janowicz)が盛り上げてくれた。昨年までチャレジャーを回っていたのが、最近頭角を現してきて、今回は、チリッチ、マリー、ティプサレビィッチ、シモンを破っての決勝進出で、21歳のシンデレラボーイだ。最速サーブは242km/hを記録し、ストロークでは強打、強打、強打、そしてドロップショット。相手は強打に警戒せざるをえないため、ドロップが効果的だ。マリーはドロップで走らされてばかりでイラつき、嫌気がさしたのかも知れない。粗削りだが、今後の活躍が期待できそうな選手だ。

フェレールの優勝は順当なところだが、マスターズ1000では初めての優勝だ。世界5位のフェレールでもでも優勝できないのが本来のマスターズ1000だが、常に全力投球をするフェレールに対するご褒美とも言える。


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D. Ferrer vs. J. Yanowicz 6-4/6-3
フェレールにとってはMasters 1000での初勝利。Yanowiczが押し気味に進めていたが、フェレールの好守備でブレークが奪えない。フェレールは少ないチャンスをものにする。 この辺がランキング5位の試合運びだ。2010年もそうだったが、準決勝までは奇跡が起きるが決勝では奇跡は起きない。決勝には、勢いできた選手と止める何かがあるようだ。  
       
J. Janowicz vs. J. Simon 6-4/7-5
Janowiczの勢いは止まらない。 Simonは打つ手なし。太鼓おじさん音頭による手拍子も効果がない。
D. Ferrer vs. M. Llodra 7-5/6-3
リョドラは2010年も準々決勝まで進んだが、今回120位のため主催者推薦で出場して準決勝にまで進んだのは奇跡に近い。太鼓おじさんの音頭でベルシー会場が一体となって応援して生まれた奇跡とも言える。
       
予選上がりのS. Querryは健闘したが2回戦でBerdichに敗れた。  Berdichは準々決勝でG. Simonに敗れる。  マリーは3回戦、ティプサレビッチは準々決勝でヤノビッツに敗れる波乱。 
マリーの3回戦の中盤以降は無気力試合と言われてもしようがない内容であった。
今回の大会からFFT(フランステニス協会)はカメラとレンズの持ち込み制限を始めた。ついにヨーロッパまで制限されるようになったのはとても残念だ。「20㎝以上のズームレンズとプロ用と見做される機材」が持ち込み禁止となった。200m以上が不可ということで、70-200mm F2.8を持ち込んだが、「プロ用」と判断されて一時預けに回された。その日は錦織の試合があっただけに写真が撮れなかったのは残念だ。

仕方なく、解像度と明るさが劣る70-300mm DO F5.6を持ち込んだ。本来は持ち込み制限対象だが、通常の300㎜ズームと比べると鏡胴を繰り出した状態でも非常に短く15㎝程度しかない。300mmの文字をマジックで消して偽装。これで問題なく検問を通過。カメラボディは問題にされなかった。残念ながらレンズの明るさ不足で満足できる写真は撮れなかった。

悩ましいレンズ規制だが、思わぬところに抜け穴があった。コートサイドのプレミアム席を買っていた準決勝では、入口が一般とは異なり、入場時のバッグチェックが行われないのだ。なんともフランスらしい上流階級優遇だ。おかげで、決勝では70-200mm F2.8を持ち込めた。来年のローラン・ギャロスをどう乗り切るかが課題だ。別入口のチケットは恐ろしく高い・・・