Roland Garros 96 ハイライト写真集
おもしろ観戦記

96年の全仏オープンの写真集をお届けします。

この写真は私個人が撮影したものです。非営利目的でのコピー、配布は制限しませんので、個人的な趣味の範囲でお楽しみください。

私が参加しているインターネットのテニス メーリングリストに投稿した観戦レポートを合わせてお届けします。レポートを読みながらご鑑賞戴ければ幸いです。一部の写真は壁紙に使って戴けるサイズにしてあります。お楽しみください。


1996
年9月22日

Parisにて

ROLAND GARROS 96
おもしろ観戦記

@Roland Garrosです。

527日。(第1日)

松岡修造 / 杉山愛 / A. Coetzer / 遠藤愛 / Y. Noah / M. Philippoussis

初日はダメでしたね。

小雨の降り続ける中、松岡は気合を入れてプレーしてくれましたが、やはりクレイ向 きではないのでしょうか。

杉山愛ちゃんの試合は残念でした。6-1/7-5ですが、スコアほど離れていませんでし た。むしろ愛ちゃんが積極的に攻めて追い込みつつあった試合ですが、今日のコッツ ァーは上手すぎました。試合が終わって席に戻る時、愛ちゃんの頬に一筋の涙が...

もうひとりの愛ちゃんは、第一セットを手堅くとったのを見て安心して、ほかの試合 を見に行ったすきに逆転されてしまいました。コートサイドは随分日本人が多いなぁと思ったら、韓国の大応援団でした。6月1日の前哨戦のようでちょっと嫌ですね。

雨にはぬれるは、ビデオカメラのバッテリーを取り上げられるはで、私の方も散々でした。

会場ではビデオの持ち込みは放映権保護の為と称して禁止されており、入り口で預け させられるシステムになっています。そこで、今年は秘密兵器としてビクターの世界最小ビデオを持ち込み、入り口の検問はクリアしたのですが、杉山愛ちゃんの撮影中に見つかってバッテリーを取られてしまいました。こんな事でくじけるかと、スペアのバッテリーで遠藤愛ちゃんを撮影してたらまた見つかってしまって万事窮す。

初日の私にとっての見所はM.Philippoussisでした。日本の女性に人気があるためか日本人カメラマンが目立ちました。圧倒的な破壊力でした。サーフェイスは全く関係無いといった様子で、スカッドサーブでがんがんエースを取り、リターンは全てハードヒットでウィナーかアウトしかなくてラリーはなし。相手のVolkovもあっけに取られて、あっと言う間に試合が終わってしまいました。すごいもんです、今時の若い人は。

528日。(第2日)

試合開始は2030分。昨日とは打って変わって快晴。。北緯49度のパリ郊外ブーローニュの森の日は高く、まだ日差しが強い。気温も24度とやや暑いがそよ風が心地良い。この時間には第7コートで長塚選手の試合がまだ続いている。彼女は苦戦しているようだ。フルセットにもつれ込んでいる。

こちらの試合は順調に進む。相手はどうやら立ち上がりに問題があるようだ。第1セットは6-4。第2セットは相手が調子を取り戻して苦戦。日が沈むにつれ日に向かうコートサイドでは殆ど前が見えない。結局 3-6。こちらもフルセットにもつれ込む。

長塚選手は勝っているだろうか?最終セットは日没後となり、日差しに撹乱される事もなくなり調子を取り戻して、ついに 2210分、6-3で勝利の時を迎える。殆どボールが見えなくなる状態で終了。

ごめんなさい。実は私ごとですが、今日は私のトーナメントデビュー戦だったのです。

苦節5年、スクール、プロコーチの個人レッスン、会社の若手のしごき、とひたすら練習に励んで今日の映えある公式戦初試合だったのです。それも勝利で飾れたという私にはRoland Garros以上に重要なイベントだったのです。といっても所属するテニスクラブの内部トーナメントですが。Roland Garros から1Kmほどのブーローニュの森のはづれにある「ブーローニュの女王」と言う格式ある名前の名門、とはほど遠いうらびれたテニスクラブです。迷惑な事ですが、ここのトーナメントは何故かRoland Garrosに対抗して同じ時期にやっています。

さて、今日のRoland Garrosはテレビを見る事もできず、Official HPからの情報では、伊達、沢松、長塚の3人のみが2回戦進出のようです。女子では、杉山、遠藤、神尾、雉牟田、平木、宮城の6人が1回戦敗退となりました。昨年はベスト16に杉山、長塚、ベスト4に伊達と素晴らしい結果でしたが、今年は2回戦進出が3人ですから、ちょっと厳しいですね。伊達の2回戦は30日と予想しますが、会社を抜け出して観戦する作戦を立案中です。

530日。(第4日)

伊達公子(vs. Jecmenica) / だーて、ちゃちゃちゃ!

5:30起床。今日も快晴、暑くなりそうだ。

ダンベルを軽くこなした後、片道 2Km の凱旋門に向かう。早朝のさわやかな空気が心地よい。途中、伊達選手が泊まっている(かも知れない)オフィシャルホテルのコンコルド・ラファイエットに立ち寄り、「そろそろ起きて、ジョギングでもしませんか」と声をかけてみるが、返事がない。「まっ、いいか。彼女は走るのが嫌いだったな。」

この2週間日本出張などでサボってしまったせいか、凱旋門までの上り坂がきつい。漸く辿り着いた凱旋門からの日の出がまばゆい。

「勝利の女神よ、日いづる国から来た公子を勝たせ給え。」

当然、凱旋門ではお百度を踏まないといけないのだが、始めたところで掃除のおじさんが怪訝な顔で見つめるので、取りあえず門の回りを1周するにとどめる。

凱旋門での勝利祈願の後、家に戻って冷水をかぶって体を清める(たっぷりのお湯につかった後、少しだけ)。

今日は、世界最小ビデオに加えて、もうひとつの秘密兵器をリュックに入れる。ふふふ、これで準備は万端だ。仕事の途中での立ち寄りなので麻のスーツに身を固めて出かける。

10:30、試合開始30分前にRoland Garros 10コートに到着。しまった、選手席ま後ろは既に顔見知りのテニスおばさん達にとられてしまっている。しかたなく、2列目に陣取る。10:55、審判入場。ここで、本日の秘密兵器「必勝 日の丸はちまき」をつけて伊達選手の入場を待つ。日本人の観客が半分以上を占める。松浦駐仏大使もご臨席されている。これは心強い。

定刻通りに伊達選手が入場。きれいだ。去年は少しにきびが残っていたのに、今日の彼女はすべすべしている。お肌の曲がり角を過ぎたのでエステに通いだしたのだろうか?エステなどに通ってグランドスラムのタイトルがとれるのだろうか? 昨日は沢松がセレスに善戦してくれたが(少なくともうなり声では勝っていた)、伊達は残された日本選手としての自覚を持ってくれているのだろうか?

よけいな事を考えている内に試合は始まる。今日の2回戦の相手は、ユーゴのJecmenica選手。WTA74位。18才位だろうか、かなりパワーがありそうだ。

初っ端で幸先よくブレークを取るが、すぐにブレークバックされて、一進一退が続く。ライジング打法と言うのは相手の球のタイミングを計るまでに時間がかかるようだ。

ライジングでも当てるだけの球が多く、本来のカウンターがまだでない。このままではあぶない。何とかしなくては。恥ずかしいからやだという(恥ずかしいという年でもない)テニスおばさん達を説得して、「だーて、チャチャチャ、だーて、チャチャチャ.・・・・・」。この声援にかるくうなづいた伊達は、漸く調子が出てきて、6-4で第1セットを取る。第2セットは、本来のカウンター攻撃によるウィナーがでるようになり、安心して見られる試合展開となる。6-23回戦進出を決める。

試合後のサインでは、おばさん達に負けないようにしっかり割り込む。去年のダベンポートとの4回戦でのスナップを引き伸ばした写真を差し出しながら、「伊達さん、今年は去年より2つだけ多く勝ってくださいね」と言うと、一瞬サインする手を休めて私に視線を送ってにっこり微笑む。

今日は見苦しい個人的な感情移入はやめて、本来のクールな特派員の仕事をすべく、Roland Garrosでのホットな話題を集めてみました。(どうしてクールでホットなんだろう?)

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Aコート

94年の大会からオープンしたコロシアム造りのコートですが、「Aコート」あるいは「コートA」では、「ひとつのコート」または「未成年犯罪者コートA」の印象を与えてしまうとの問題が指摘されていました。そこで、伝説のヒロインSuzanne Lenglen(スザンヌ・ランラン)の名前を冠してStade Suzanne Lenglenと名づけられる事になりました。いちいちこの名前で呼ぶのはちょっと面倒なので、通称SLコートと呼ばれるようです。大会初日の除幕式ではモニカ・セレスがテープカットの栄誉を担いました。

Suzanne Lenglen1919年から1925にかけて全仏・全英を制覇し続けたフランスの女性プレーヤーです。Roland Garrosでの女子優勝杯はCoupe Suzanne Lenglenです。フランスの栄光や今いづこ。

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Henri LECONTE(アンリ・ルコント)とYanick NOAH(ヤニック・ノア)

今年の話題のひとつは通称Roland Garros男のルコントの最後の大会参加です。「ルコントの試合ではコートサイドには絶対に座るな。 どこに剛球が飛んでくるか分からないから命懸けだ。」と言われた殺人兵器ルコントです。10年程前には世界ランク5位までいき、全仏ファイナリスト、全英セミファイナリストになっています。

2年前のRoland Garrosでは全仏ベスト8に返り咲き話題になりました。今回は1回戦で負けてしまいましたが、試合後審判席のマイクを借りて挨拶し、「みなさんにはご迷惑をかけた事も多かったですが」と言って笑わせていました。32歳。

フランスでの最大のスターはヤニック・ノア(35歳)です。初日のNo.1コートでフォルジェの試合を見ていた時、ノアが自分の子ども達を連れて入ってきたら会場が「ヤニック、ヤニック」と騒ぎ出して試合が中断してしまいました。近年ではフランス人で唯ひとり1983年にRoland Garrosで優勝した選手です。現役時代から歌手としても人気があります。今では歌手、デビスカップナショナルチーム監督の傍ら、テニスツァーにも復帰しています。先日のモンテカルロオープンではフォルジェを相手にフルセットまでいっていました。なんといってもスーパースターです。前の奥さんも美人でしたが(だから子供たちがとっても可愛い)、昨年再婚した人も超のつく美人です。

このノアとルコントが、昨日30日のダブルスに出ました。相手は去年のウィンブルドンで審判に暴言を吐いて悪役として一躍有名になったタランゴ組。ノアは得意のアフリカンダンスのステップを踏みながらの華麗なボレー、ルコントも負けじと得意のすっぽ抜けホームランを披露して、満員のSLコートはやんやの喝采です。

こんな芸能人組を相手に1セットオールとされてしまった悪役タランゴは、憮然とした表情で、最終セットは憎しみを表にだしての攻撃で芸能人組から勝ちをもぎ取りました。負けたノアはそれでも楽しそうで、試合後に父親の故郷カメルーンの歌を1曲披露して、またまた大喝采。全仏テニスと言うより、バラエティーショーの一幕のようでした。

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自分勝手のフランス流

Roland Garrosはフランス人のフランス人によるフランス人の為のお祭りです。全てはこの原則が貫かれます。従って、センターコートやSLコートでの試合の組み合わせは、フランス人にとっての重要度で決められます。ノーシードでも人気のあるフランス選手の試合はメインコートで行われます。全てが自分たちが楽しきゃいいじゃないのの精神で貫かれているので、本当に楽しい大会です。

一方のウィンブルドンは伝統と格式にのっとり、規則正しくセンター・No.1コートの組み合わせが決まります。(あっ、イギリスにはえこひいきしようにも、ワイルドカードでしか出場できない選手しかいないんだったっけ。最近はカナダからルゼドフスキーをスカウトしてイギリス人にしたりしてなりふり構わず強化を始めたので、その内方針が変わるかも)

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ピリピリ公害

MLでも携帯ピリピリ問題が討議されていますが、Roland Garrosでも問題が出ています。いろいろな方面から観客席での使用禁止を呼びかけていますが、オンにしたまま持ち込むやつがいます。初日の杉山愛ちゃんの試合中も二度ほどピリピリ鳴りました。

一瞬 プレー中の愛ちゃんの表情が変わりましたが、試合はそのまま続けられました。実害のないビデオを取り締まるくらいなら、携帯の取り締まりを強化してもらいたいものです。

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美人の園

Winbledonは伝統行事、Roland Garrosはお祭りという事で、Roland Garrosにはお祭りの華やかさがあります。そして、この華やかさは美人が各所に配備されて一層際立っています。(美男も配備されているのかも知れませんが、その趣味がないので注意して見ていません。) いるわ、いるわ、どうしてこんなにも美人だらけなのでしょうか?Winbledonでは美人を見たという記憶が全くありません。

フランスは美人の国と思っている人もいるかも知れませんが、これは違います。普段会社とか道を歩いていて美人に巡り合える事はまずありません。Roland Garrosではフランス中の美人を一挙に集めたようです。会場の案内係り、ブティックの売り子さんから会場掃除の女性などあらゆる女性の会場スタッフが美人です。例外は審判員の女性だけです(セクハラ失言許してネ)。中でも、ハーゲンダッツのアイスクリーム売りの女性たちは粒揃いの美人です。こんな美人から400円でアイスクリームと笑顔が買えるのだから安いものです。(と言う訳で、1日にアイス5本も食べてしまった。)

さらに極めつけは、タオルやバスローブなどのRoland Garrosグッズを売っているブティックの女性です。スーパーモデルもかくやと思われるような目のさめる美人が5人もいます。まだ何も買っていませんが(買う気もありませんが)、もう3回も店を見に行っています。ここまでが、われわれのような一般客が見られる美人です。

会場内には「VIP村」と呼ばれる社交クラブがいくつかあります。芸能人、スポーツ関係者、お金持ち、企業のトップなどの溜まり場でテニスなど二の次の人達です。この中にはどんな美人がいるかと思うと、想像もつきません。

(あぁぁぁ、何とかして入り込めないものか.....。い、いけない、クールなレポートの筈が、思わず感情移入してしまった。)

6月1日。(第6日)

前報に誤報がありました。謹んでお詫び申し上げます。

Roland Garrosでは審判員を除いて美人ばかりだ」と報告しましたが、この記事に抗議するかのように、今日の記者の前には「これでもか、これでもか」とばかりに美人審判員が登場しました。まず、皆さんもご覧になったと思いますが、伊達−Wild戦の主審。若くはありませんが、間違いなく美人です。コールもハスキーで魅惑されました。次が、同じ試合の主審席に向かって右中央の線審。二十歳前後でしょうか、小柄で胸の豊かな美人でニコニコと愛敬を振りまいていました。試合中に交代した第二グループの同じ位置の線審は、これはもうとびきりの美人でした。彼女が凛とした声で"FAUTE"とコールしてアウトのポーズをとると、思わずみとれてしまいます。他のコートでも美人審判が多く、Fusai+1-Testud+1のフランス人同士の女子ダブルスの主審も25歳前後の美しい方でした。ジャッジの方は少し頼りなく、選手の抗議での中断がが多発していました。女子選手には主審が美人であろう とんなかろうと関係ありませんが、男の多い観客席からは、美人主審への応援がおくられていました。

ね、ちょっとおかしいと思いませんか?

審判といえば、40-50歳台のおじさんが殆どで中に1-2割りのおばさんがいる、というのが普通です。ここに、二十歳前後の美人の女性がいるのは、どう見ても何か裏がある。

と、記者はにらんで早速取材に走りました。ところが、「フランスの秘密を日本人などに知られてなるものか」とガードが固く、なかなか教えてくれません。

しかし、情報ネットワークを駆使して調べた結果、ようやくおぼろげながら実態が見えてきました。これは、FFT(フランステニス協会)の巧妙な戦略だったのです。FFTの組織力は絶大で、13,000のテニスクラブと110万人ものメンバー(人口の2%)を擁しています。こんなに多くの加入者がいることは普通考えられませんが、巧妙な仕掛けがあるのです。実は「テニス保険」に加入すると自動的にFFTのメンバーになってしまうのです。メンバーにしてしまえば、もうFFTの思い通りです。これだけのメンバーがいれば当然沢山の美人もいます。各クラブで選抜された美人メンバーが集められ、「美人審判養成所」で訓練されるのです。養成所の実態は明かしてもらえませんでしたが、存在するのは間違いありません。

日本テニス協会にもFFTの戦略を見習ってもらいたいものです。

伊達公子(vs. L.Wild) / J. Hlasek / M.Rosset / S.Edberg

さて、伊達−Wild戦。

Home PageからWildの個人データを収集して試合に臨む。Wildはトスに勝ってレシーブを選んだ。なるほど、彼女のデータはファーストサーブでのポイントが少ない事を示している。ブレーク合戦からスタートしてお互いにサービスゲームが取れない展開。相変わらず、伊達選手の立ち上がりは苦しい。第一セット後半から本来の調子がでて、このセットを取って第二セットの 2-0までは順調に進む。ここでまた調子が崩れだしてナーバスになる。2-1でまだリードしているが、心配だ。なんとかしなくちゃ。でも今日は顔見知りがいない。思い切って回りの日本人に「伊達、チャチャチャ、しませんか」と声をかけると、しらーとした表情で見返されるだけで乗ってくれない。若い日本女性から「なに、このおじさん。ちょっとおかしいんじゃないのぉ?」と言う軽蔑のまなこで見られてしまう。(本当におかしいのかも知れないけど。) という訳で、応援が不調に終わり、伊達はどんどん追い込まれてしまう結果となった。このまま終わったらどうしよう。敗戦インタビューで、「今日は伊達チャチャチャがなかったので負けてしまいました」ということになるのではないか?責任 は重大だ。

と、いらぬ心配をし始めたところで、崖っ縁の伊達の勢いが急に盛り返す。「もう応援なんて当てにしない。自分しか頼れるものはいない。」と吹っ切れた伊達の勢いはすごい。

あー、今日も疲れる試合だった。

今日のヒーローはなんと言っても、エドバーグですね。

今期唯ひとりムスターを破った急上昇中のモヤを圧倒した後、今日はチャンを一蹴。これこそテニスという素晴らしい試合内容です。

この調子では今まで取れなかった全仏のタイトルをを引退試合で取れるかもしれませんね。頑張れ。

62日。(第7日)

伊達公子 (vs. L.Davenport) / G. Fernandez N. Zverava /M. Philippoussis P. Rafter

ついに終わってしまいましたね。

スタートはいつになく好調でした。表情にもいつもの眉間のしわがなく、和やかでリラックスしているように感じられました。6-3で第1セットを取った後、4-2でリードしていた時までは、このまま終わってしまうものと思っていました。ここから6ゲーム連続負け。何がきっかけとこのように流れが変わってしまったのでしょうか。 終盤では追いついてくれて、あわやの期待を抱かせてくれましたが、残念です。でも、いい試合でした。

テレビでご覧になった方、KIMIKOコールを聞かれましたか?No.1コートの観客の殆どは伊達びいきでした。(美人は得ですね。) 中盤までの応援はもう一つ盛り上がりにかけました。どうやら原因が彼女の名前がイニシャルのKだけで分からない事にあると気が付き、「きみこー」とコールしてみました。この後、KIMIKOコールが至るところで掛かるようになった次第です。声にだしてみると、「伊達、頑張れ」などと日本語で言うより、「アレー、キミコ」とフランス人の振りをして言う方が言いやすく、乗れました。

Kimikoなき後、Roland Garros便りも暫く休ませて戴き、来週末の決勝戦からレポートします。(これ以上仕事をサボっていてはクビになってしまいます。) では。

63日。(第8日)

EdbergMusterが負けてしまいましたね。

今年の Roland Garros の特徴的なところは、Musterやスペイン、フランスのクレーのスペシャリストが、早い段階で消えてしまった事です。専門家の分析によると、原因は天気にある事が判明しました。例年より天気が良く、空気も乾燥しているので、球足が早くなっているのです。その為、ビッグ・サーバーやヴォレイヤーに有利に働いているというのです。

私もPhilipoussis,Rosset, Rafterなどのサーブを見ましたが、サーフェイスは関係の無い恐ろしいスピードです。Rafterの試合では、ボールガールがサーブをよけきれずに口に当ててしまいました。暫くは痛みを我慢していましたが、耐え切れなくなり泣き出してしまいました。可哀相に。

こうした中で、今年のフランスチームは Pioline を除いて3回戦までで全滅してしまいました。それと符牒を合わすかのように、フランステニス協会(FFT) C.Bimes 会長が辞意を表明しました。フランス選手の不振の責任を取ったと憶測されていますが、辞意の背景は明らかにされていません。

これにはまだ裏がある、と睨んだ私は、早速情報網を駆使して調べてみました。そこで浮かびあがってきたのは、またしてもFFTの遠大なる戦略です。どうやら、ビーム 会長の辞任の原因は、天気をコントロールできなかった事にあるようなのです。そんな事ができる筈がない、と思われるかもしれませんが、スキーでは気候条件に合わせて板とワックスを選び、自動車レースではタイヤを選びます。テニスでも可能な筈です。今年の問題が球足の速さであれば、ボールの圧力を下げる、または、コートの湿度を保つ事で対応できる筈です。今年のRoland Garrosでは、こうした対応策が取られていなかった点が協会内部での会長批判に繋がったようです。

ボールの圧力を下げて球足を遅くするのは、既に昨年の Winbledon で実施されています。(イギリス人に勝たせるためではありませんが。) また、昨年の ATP Paris Open(FFT主催)では、クレーコートとの親近性を出すとの理由で、仏大手化学メーカーが新開発した合成サーフェースと圧を下げたボールが採用されました。(フランス人に勝たせるつもりが、成功しませんでしたが。)

この延長線上でのRoland Garros対策の声が協会内部で上がっても不思議ではありません。関係者は口を開こうとはしませんが、来年のRoland Garrosでは天気対策が行われるのはほぼ間違いのないところです。

68日。(第13日)

S. Graf vs A. Sanchez Vicarioは決勝にふさわしい素晴らしい試合でしたね。3時間の熱戦に会場は沸きに沸きました。

私はGrafが試合中にこんなに感情をあらわにするのを初めて見ました。普通の人と同じように弱い面もあるのかと思うと同時に、改めて底力も見せ付けられました。第2 セットをタイブレークで取られて、ファイナルセットに入った時はSanchezに流れが移ってそのまま終わるかと思いましたが、土壇場で 5-5に戻した後は再び盤石のGrafに戻りました。最後は、最初のマッチポイントを確実に決めて終了。6-3/6-7/10-8

優勝の挨拶の中で、フランス語で「この14日間応援ありがとう。」と言うべきところを間違って、「14年」と言ってしまい、引退挨拶のようでもありました。

男子ダブルス決勝は,J.Kafelnikov/D.Vacek に対して中年コンビの G.Forget/J.Hlacekでした。Forget/Hlacek組みはWoodiesを破っての決勝進出で期待していたのですが、あっけなく片づけられてしまいました。Kafelnikovにとっては明日のシングルス決勝に備えた軽い肩慣らしのようでした。明日の Stichとの組み合わせでも、Kafelnikov有利の評が多いようです。

では、また明日。

69日。(第14日)

ついに最終日。午前中は少し雲が残って涼しさが感じられましたが、シングルス決勝Y. Kafelnikov vs M. Stich戦が始まる頃には快晴。気温は徐々に上がって27度。準決勝のKafelnikov vs Sampras戦は34度の1938年以来という猛暑の中でしたが、今日は日差しは強くても風が心地よい初夏の日和でした。

試合結果はKafelnikov 3-0 でしたが、Stichにも勝機はあった筈です。第2セットで2ゲームリード、第3セットで1ゲームリードをひっくり返されての負けです。敗因は肝心のところでファーストサーブが決まらないのと、ボレーでの攻めに弱点がでた点でしょうか。一方のKafelnikovは、リードされていてもじっくりと追い込んで逆転する粘りは大したものです。

Kafelnikovは以前の試合でボールガールにタオルを投げつけたり、横柄な態度が目立つので好きにはなれませんでした。客席の応援も殆どがスティッヒでした。しかし、今日のKafelnikovは、おもわずラケットでネットをひっぱたこうとするのを思いとどめていました。多少は成長したのかな?

表彰台での挨拶ではスティッヒへの拍手が圧倒的でした。そこそこできるフランス語で挨拶した事もあるからですが。"J'ai perdu un match....mai j'ai retrouve l'amour de sport."「試合には負けたけれど、スポーツへの情熱を取り戻すことができた」と、大変きざな言葉で受けていました。

携帯電話

前にもレポートしましたが、Roland Garrosでも携帯公害は問題でした。今日の男子シングルス決勝でも、試合の前に主審が「携帯のスイッチは切るように」と注意したところ、賛同の拍手が沸きあがりました。それでも、試合中2度鳴りました。

Noah/Leconteのダブルスの試合でのひとこま。試合中に携帯電話がピリピリ。観客が「おーい、電話!」。すかさずYannick Noahが、「おれは いないって言ってくれ!」。

応援コール

伊達コールに加えて公子コールもものにした私ですが、Roland Garrosでの応援コールについて少し考察してみました。(それほど大袈裟なものでもありませんが。)

名前で呼ぶか、名字で呼ぶか、選手によって分かれます。人気のある選手とフランス選手は名前で呼ばれます。シュテフィ、モニカ、アランチャ、ステファン、ピート、ヤニック、アンリ、などです。これらの選手は名字で呼ばれる事はありません。親近感があるからなのでしょうか。伊達公子の場合も「ダテ」とは呼ばれず、「キミコ」 と呼ばれています。また、これらの選手の試合では自然発生的に、「シュテフィ、チャチャチャ」などのチャチャチャコールが沸き上がります。

名前と名字の両方がコールされる選手もいます。今日のMichael Stichがそうです。ドイツ読みのコールはありませんでしたが、「スティッシュ」「スティック」「ミシェル」「ミシャエル」「マイケル」などのフランス語読み、英語読みが混じっていました。人気は十分ある筈ですが、名前のMichaelの読み方が独英仏で異なるために名字で呼ぶ人もでてくるのでしょうか。同じドイツ人でもBoris Beckerの場合は必ず「ボリス」と呼ばれます。

名字で呼ばれるのは、比較的下位ランクの選手が多いようです。あまり馴染みがないので名前で呼ぶには至っていないということでしょうか。中には、Yevgeny Kafelnikovのように知名度はあるのに、名字で呼ばれているケースもあります。「イェフゲニィ(?)」と呼ぶのが馴染みにくいからでしょうか。それとも憎らしいからでしょうか。 名字の呼ばれ方はバリエーションがあって、「カフェルニコフ」が多いのですが、「カフェル」と愛称で呼ばれるケースと「カラシニコフ」という渾名で呼ばれるケースがありました。(カラシニコフというのは、あのオームが作ろうとしたロシアの機関銃の事でしょうか?なるほど、の渾名ですね。)

祭りの終わりというのは淋しいものですね。明日からは普通の日です。

出席率 6/14。お陰ですっかり日焼けしました。

では、また来年(まではいないかな)。

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