96年6月1日

天気対策

FFTの野望と戦略 -2-

96年の Roland Garros の特徴的なところは、Musterやスペイン、フランスのクレーのスペシャリストが、早い段階で消えてしまった事です。専門家の分析によると、原因は天気にある事が判明しました。例年より天気が良く、空気も乾燥しているので、球足が早くなっているのです。その為、ビッグ・サーバーやヴォレイヤーに有利に働いているというのです。

私もPhilipoussis,Rosset, Rafterなどのサーブを見ましたが、サーフェイスは関係の無い恐ろしいスピードです。Rafterの試合では、ボールガールがサーブをよけきれずに口に当ててしまいました。暫くは痛みを我慢していましたが、耐え切れなくなり泣き出してしまいました。可哀相に。

こうした中で、今年のフランスチームは Pioline を除いて3回戦までで全滅してしまいました。それと符牒を合わすかのように、フランステニス協会(FFT) C.Bimes 会長が辞意を表明しました。フランス選手の不振の責任を取ったと憶測されていますが、辞意の背景は明らかにされていません。

これにはまだ裏がある、と睨んだ私は、早速情報網を駆使して調べてみました。そこで浮かびあがってきたのは、またしてもFFTの遠大なる戦略です。どうやら、ビーム 会長の辞任の原因は、天気をコントロールできなかった事にあるようなのです。そんな事ができる筈がない、と思われるかもしれませんが、スキーでは気候条件に合わせて板とワックスを選び、自動車レースではタイヤを選びます。テニスでも可能な筈です。今年の問題が球足の速さであれば、ボールの圧力を下げる、または、コートの湿度を保つ事で対応できる筈です。今年のRoland Garrosでは、こうした対応策が取られていなかった点が協会内部での会長批判に繋がったようです。

ボールの圧力を下げて球足を遅くするのは、既に昨年の Winbledon で実施されています。(イギリス人に勝たせるためではありませんが。) また、昨年の ATP Paris Open(FFT主催)では、クレーコートとの親近性を出すとの理由で、仏大手化学メーカーが新開発した合成サーフェースと圧を下げたボールが採用されました。(フランス人に勝たせるつもりが、成功しませんでしたが。)

この延長線上でのRoland Garros対策の声が協会内部で上がっても不思議ではありません。関係者は口を開こうとはしませんが、来年のRoland Garrosでは天気対策が行われるのはほぼ間違いのないところです。

(その後ビーム会長は辞任せず健在です。来年のRoland Garros対策が確実にできたという事でしょうか?)